【まちなかストーリー】WINE & JAPANESE GRILL FUJITA 藤田 隼介さん 第4回「まちなかで起業すること、まちなかの飲食店について思うこと」

まちなかで活躍する人にスポットを当てて、そのヒトの街に対する想いや物語を紹介する「まちなかストーリー」。
今回は2人目、WINE & JAPANESE GRILL FUJITAの藤田 隼介さん。
第4回は、「まちなかで起業すること、まちなかの飲食店について思うこと」をお話していただきました。

人物紹介

藤田 隼介さん
23歳で飲食業に誘われた時に5年で自分の店を出す条件で働き始め、その後田町で和洋創作ダイニングの「花音」を開店。自分のお店のスタイルを求めて松城町のまちなか寄りに移転し、1年半前に「ワイン&ジャパニーズグリルFUJITA」に店名を変更。日本人好みの和の味付けで、素材と誠実に向き合いとことんこだわった地元食材を使ったメニューを提供している。最近のブームは海外ドラマの一気見。実はインタビューが苦手。
お店のウェブサイト:「WINE & JAPANESE GRILL FUJITA

今と昔のまちなかと、お店選びにシビアになったお客さんの意識の違い

伊藤 今後の目標とか、今後どうするとかありますか?また街中に戻ろうとか。

藤田 まちなかに戻るのは今のとこなさそうですね(笑)でも、ここも横断歩道できたらまちなかの圏内になるかもしれない。エリア的には浜松城のところくらいまでは本来はエリア内ですしね。

まちなかに出すとしたらたぶん、自分は店舗にでないんじゃないかなと思います。飲食店でまた何かやりたいなというのもあるんですけど、それよりもまずはこっちの店舗の土台をしっかり安定させたいなと。

伊藤 ちなみに藤田さんお幾つですか?

藤田 僕今年36になります。

伊藤 それこそ高校生位からまちなかをご覧になっているじゃないですか。昔と今とまちなかはどう違いますか?

藤田 そうですねー、人が少なくなっているのと、あとはお客さんがお金を使わないんですよね…結構シビアになっています。本っ当にシビアになっていると思います。

今はいろんな情報をインターネットとかで見れるじゃないですか?僕が10代の時とかはスマホがなかったですからね(笑)便利なことに、今はスマホで調べればお店の情報がいっぱい出てきますから。

お金を使わないってより、お金をつかうところにはちゃんと使うんでしょうけれども、それに対する考え方がシビアなんですよね。コストパフォーマンスだったり、クオリティーだったり、その辺のバランスを、お客さんが結構ちゃんと考えていますよね。

もちろん自分だってそうなんですけどね!例えばどっか行くぞってなった時には、職業病で余計に「シビア」に考えちゃうんですけれど、これくらいお金を出すならこっちのお店に行くよとか、これくらいの値段でこの程度のクオリティーだとなぁ・・・とか。

いいものを食べたいって思って、お金をかけて納得のできるものが出てくれば満足ですけど、でも例えば、気の知れた仲間内で本当にちょっと飲む程度なら、安いお店でさくっとでもいいかとなった時にも、安いお店を知っていたりネットで探したりして行きますよね。

そこら辺の選択が、今のお客さんは(いろんな情報で)幅が増えているでしょうし、真摯に向き合わないと難しいですよね。そんな中でどれだけ自分のお店に対して、例えばコンセプトとかで選んでいただくかっていうのが難しいところだなと思います。

自分もどちらかというと起業したいって言う性分で起業したのは良いんですけど、どちらかと言うと、僕はあんまり人としゃべるのが苦手なので…。もう、もくもくと料理作っている方が好きなんですけど(笑)

それで、広告や、宣伝をしたりとかも苦手な方なので、敬遠してきていたんですね。でも、それじゃダメだろうと。ここ何年かでそんなことで自分が嫌だって言ってやらないのは、ダメだなと。やっぱり、少しでも宣伝していかないとと思って。

たぶん2,3年前だったら今回のインタビューの話もお断りしていたなって(笑)

一同 (笑)

藤田 今回のお話を橋爪くんに言われても、「ああ…いいですいいです」って。「無理無理無理…!」って言ってたと思います(笑)昔の自分は本当ダメダメでしたね。

ちょっとお金を出していいものを。まちなかの飲食店の印象は「良い店は個人店が多い」

鳥居 では、よければ今の「まちなかの飲食店」の印象を聞かせてください

藤田 正直な話でいいですか?

この前も、大手とかがやってるちょっと小洒落た某チェーン店とか、何店舗かいったんですよ。そしたらあんまりで…

例えば、いくらこだわりを持った料理人さんがいたとしても、そこの店舗っていうのはその店舗のマニュアルがあって、ある程度の決められた範囲内でしか出来ないわけじゃないですか。そうすると、その人の実力ってのは、発揮されなくなってしまうわけで。

もちろん、それらの店舗さんには店舗さんなりのやり方があるので、それが悪いとは言わないんですが、あんまり良いというイメージがありませんね。ただ、もちろん、いい店はありますよ!いい店はあるんですけど、その中でもやっぱり僕が良いなと思う店は”個人店”が多いですね。

コストパフォーマンスを大事にするのは分かるんですけど、「んー、安くてもこれはどうなのかな?」ってものを平気で出しているところが多い気がするんです。それじゃあ、高い店に行けばいいかというと、一筋縄ではいかないのが面白くて。今度は高すぎて、「んー、この値段出してこれかー!」っていうこともありますし。もちろん、価値観は人それぞれで、個人個人の考え方があるのでダメとは言わないですが。

なので、まちなかの飲食店は、僕はあんまり良いイメージを持っていないんです。ただ、何度もいいますが、もちろん良いお店はいっぱいあります。あーすごいな、ちゃんとやってるなと思うお店も。ただ、こないだ行ったまちなかのお店は2件とも、残念な印象のお店だったというだけのことです。

鳥居 なかなかそういう残念な印象の今後お店が良くなるというイメージがないのですが…

藤田 でも、そういうお店の方がお客さんが入ってるんですよ。特に若い子を中心に。たぶん使い勝手が良いんでしょうね。値段もそんなに高くない、色んな食べ物あって、いろんな飲み物があって、使い勝手が良いからとりあえずここにしてしまう。

でも、僕はですよ、僕は、あんまりオススメしない…かなぁと。もうちょっとお金払って、もうちょっといいとこに行っても良いんじゃないかなって思っちゃいますね。なので、美味しいものに少しでもこだわるなら、使い勝手だけで安易に決めずに、まちなかの良いお店をちゃんと知ってもらって、使ってもらえたらいいなと思います。

「個室」と「お店のコンセプト」の流行り方について

鳥居 先ほどの「まちなかの飲食店について」のお話は必ず聞くようにしていて、その時によく出るお話が「個室のお店が多い」と。

藤田 3・4年前、もうちょっと前くらいかな。個室個室と言っていて。僕も、7,8年くらい前に店を出すときに施工さんに言われたのが、「今からやるんだったら”個室の居酒屋”だよ」って言われたくらいで。

そのくらいの頃からみなさん個室個室と、お客さんも個室がいいですっていうことが多くなりましたよね。今さっきの予約のお電話も「個室とれます?」「空いてますよ」ってやりとりをして。今は、もうしょうがないんでしょうね…やっぱりグループである程度仕切られている中で食事をする場を求めているみたいです。

それで、うちも前のお店の時は、奥の部屋は15人位入れるような店舗のレイアウトだったんですよ。

鳥居 では、今4〜6人の個室がいくつかある場所は、前は壁がなかったんですか

藤田 壁無かったんですよ、個室のところ。だけどあんまりにも個室の要望が多かったので、壁一枚入れて首つけちゃおうって。

鳥居 やっぱり個室のほうが人が入るんですね

藤田 カウンターに座る人は、もう本当に常連さんか知り合いか…たまにいますけどね、カウンターのほうが良いって方。カップルなんかでも、カウンターのほうが隣同士で座れるじゃないですか、そのほうが良いって方いますよね。テーブル席だと、対面になっちゃうので。でもたまにいますけどね、テーブル席で隣同士で座るカップルさん。

鳥居 ぱっと見ると不思議な感じに見えるんですけどね。あれはあれで仲良さそうで良いなぁと思いますけど(笑)

藤田 テーブルなのに同じ方向っ向いてるのでちょっと不思議な光景ですけどね(笑)

というわけで、たしかに個室の要望は多いですね。なので、個室居酒屋みたいなコンセプトのところは浜松には多いです。

鳥居 やっぱりみなさん同じような印象を抱いているんですね。特に浜松は個室意識が強いというか

藤田 でしょうね。まぁ…あと5年位したら変わってくるんじゃないですかね!

鳥居 お、本当ですか!

藤田 どうでしょうねぇ(笑)でも、昔はそんなに言われていなかったですもんね。でも、都会のほうが個室個室と流行ってきていて、後々こっちにもその流れがきて…7、8年くらい前かな、僕が店を出す前くらいだったかな、だんだん個室個室っていいだして。

鳥居 最近、都内だと個室個室と主張するところは少なくなってきているように思いますね。もちろんちょっと高いお店や個室をコンセプトとしたお店だとまた別ですけど。それよりも、ちゃんとグループの人数で一つのテーブルや島で予約が取れるお店のほうが大事とか、そういった方にシフトしつつあると思います。

藤田 あーなるほど、そうですよね。

鳥居 その結果が重複予約して、片方を無断キャンセルするとかそういう問題が今度は頻発していっている背景になっているんじゃないかと。なかなか大変だなと…

藤田 ですよね。確かに、テレビとかでしか僕は知らないですけど情報誌とか見ていても、そんな個室とか動向っていう特集がないですもんね。むしろ、広々としたフロアに、それなりにあまり向き合わないようにした工夫をしてあったりとか、あんまり個室ってイメージが無いですよね。

鳥居 はい、個室を多く作るよりはむしろ壁を取っ払っちゃって、逆にフロアを広く見せて、「開放感のある」とか「お店の雰囲気とコンセプト」とかってワードが飛び交うようになってきましたね。

藤田 まぁ…10年位後ですかね、浜松にその流れが来るのは(笑)

鳥居 5年10年遅れてきますからね。

藤田 本当にそうです(笑)こっちもバルとか流行ってるじゃないですか、バールマブチさんとかもそうですけど、あれも都会の流行から1テンポ遅れて浜松に来ましたからね。

鳥居 こっちでやる人がぜんぜんいなかったのが不思議だったんです。

藤田 いやー、考える事一緒なんでしょうね。僕も良いなと思ってたらあっという間に流行りだしたんで。で、僕知らなかったんですよ、バルが流行っているってことを。あーそういうことか、そういう流行りが来たんだ!と思って(笑)

鳥居 本当にその通りですね(笑)

藤田 で、こっちのお店のスタイルを変えるときに、「あー肉とワインとか良いよな」って思って。自分もワイン好きなのもあって。そしたら、それも最近流行ってきたじゃないですか!それで、そんな大事な時に流行りの時期と丸かぶりになっちゃって(笑) 「お前、なんか流れに乗ったのか」くらいの感じになっちゃって、いやー、ものすごい嫌だなーと思って(笑)

それで、うちがスタイルを変えた後くらいに、ポンポンポンポン同じようなお店が浜松にもできちゃって。「肉とワイン」みたいなコンセプトで。あ、聞いたことあるぞ、いやいやいやいや、これはまずいでしょ!って(笑) それもあって少し変更をしたんです。

鳥居 それで今は、”和食”寄りにというコンセプトになっているんですか?

藤田 そうですね、ちょっとね、何か…アレンジを入れたほうが…!って。とはいえ、和食はもともとお客さんの需要とかもあったんですけどね。始めの頃にそういうコンセプトでやったんですけど、それをもっとより強く打ち出すようにして。

例えば最初の頃は、お刺身とかはカルパッチョとかをメニューに入れてたんですけど、お刺身自体は置いてなくて。でも、お刺身があってもいいでしょとなって。日本のワインだったら合わせられなくもないし、いきなりワインばっかり飲むお客さんはそこまで多くなくて、うちはワインバーじゃないので最初にビール飲んだり焼酎飲んだりする人もいますので、そういうのも全然OKだなと。じゃあ、メニューにお刺身があってもいいでしょうって。

他のイタリアンバルとかは、さすがにお刺身は置いてないじゃないですか。なので悪く言うなら、うちのお店はメニューが中途半端って印象になっちゃいます。だけど、そこで中途半端って思われないようなこだわった一品を出すように心がけて。

これで、こだわりもない普通のお刺身とか出してたら、「まぁあそこの店は何でもあるけど(中途半端だ)」となっちゃうので、それだけは本当に嫌なのでちゃんと避けながら。

鳥居 なるほど、今のお話で先ほどのまちなかのお店のお話がここで一本に繋がりましたね。

藤田 ええ。なるべく僕からしてみれば、そういうのを少しでも分かってもらえるお客様に来てもらえればありがたいなってところで、少しずつ地道にやっていければなって。

なので、HACHIの橋爪くんなんかはやっぱそういうことも、話をしてすごく共感できるところもあるし、それでお互い食べるのが好きで、お世辞かもしれないですけど橋爪くんもうちで出す料理も好きだと言ってくれて。わかってくれるんだなと。

なので、「これどこで買ってます?」とか、「これどうやって作ってます?」とか聞いたり話したりして、お互い刺激しながら。そういうのが分かってもらえるとすごい嬉しいですし、そういうお客さんが増えてくれると嬉しいなと。他と比べたら、ちょっと高いですけど、これならありでしょ、うまいよね、って。それで、僕も頑張って極力リーズナブルに出せたらいいなと。

鳥居 橋爪さん、「ここのお店はほんとにうまいから行ったほうが良い」と言ってて。多分あちこちで言ってますよ(笑)

ーー私鳥居も、インタビュー後にディナーに行きましたが、本当に野菜もお肉も魚も、全部美味しかったです。

起業をすると決まればあとは勢いが大事!ただし綿密に計画を立てるべし!

鳥居 今後、お店を出す方たちへのメッセージがあればお願いします。

藤田 そんな偉そうに言える立場じゃないですけど僕なんかもう(笑)そうですねー…やっぱり「勢いは大事」だと思いますよ。

鳥居 橋爪さんも同じ事言ってましたね!

藤田 僕も言われたんですよ、「やるって決めたんだったらやっちゃわなきゃダメだよ。いつまでもそんなぐだぐだやってたら。」って。それでさらに言われたのが、「もう、やるなら、若いうちにやっちまえ」と。

「若いうちなら修正が効くから」と。「4、50歳からお金を貯めてやりましたとなっても、仮に失敗したり軌道修正しようとしても、体力的なものもあったりと難しい部分がいっぱい出てくるから若ければやり直しも聞くよ」と言われて。

それは僕も本当にそうだなと思って。彼(橋爪さん)も28歳位で結構若くにお店をだしたんですけど。僕も、28歳くらいの時にやるやるって決めちゃって、無理無理でしたけど自分のお店を出しましたし。

とまぁ…勢い大事ですけど、ちょっと考えてやったほうが良いんじゃないと言うのもありますよね、うん、ちゃんと考えてやろうね(笑)

ある程度やっぱり考えて…一週間分くらいの釣り銭は用意するくらいちゃんと用意は綿密にした方がいいですね(笑)まあ…釣り銭の話も冗談ではないですけど、やるなら若いうちにやったほうが、結果は良いんじゃないかなと思います。

ただ、僕の創業した当時だからこそ、そんな感じで勢いで出来たと思いますが、今はこういう時代なので、そんな無鉄砲にやったら本当に難しいと思います。今のまちなかはすごい店舗変わっているじゃないですか、ころころと。

そういう意味では本当に難しい時代だと思うので、さっきの釣り銭の話じゃないですけど、ちゃんと売上だったり、人件費だったり、損益分岐点だったりっていうのを考えて、しっかり計算してやったほうが良いんじゃないかと思いますね。

シビアに。お客さんもシビアなんで、自分たちもよりシビアに。

伊藤 当時と今ではそんなに違いますか?

藤田 当時はぜんぜん楽だったと思いますよ。僕あの当時、本当にお店を出すこと以外なんも考えてなかったんで。いや、なにもというと語弊があるので…ある程度は考えてやってましたけど、それでもさっきあげたようなことはそこまでしっかりやっていなくて。

今考えると本当にあまちゃんで、当時、本当によくあれでやってこられたなあと。でも、それがある意味での”勢い”ってやつですかね。

伊藤 そういう時代だったってこともあるんでしょうかね

藤田 (そういう)時代のおかげですね。それと本当に当時の自分は”勢い”だったので。今お金があって飲食で起業するかどうかって言っても、ちゃんと計画を立てて見込みが無いのなら「やんないやんない」って、「いやいや怖い怖い」ってなりますね。

なので、やるぞ!と決めた時の勢いは大事ですが、それと同じくらい冷静に、綿密に計画して実行していくことも大事だと思いますね。

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今週はここまで!
次回は3人目のマチナカストーリー!公開予定日は9/9です。お楽しみに!