【まちなかストーリー】ティルナノーグ 大石世志子さん 第2回「未経験の飲食業とお客様の大切さ、そしておいしいベアードビールの話」

まちなかで活躍する人にスポットを当てて、そのヒトの街に対する想いや物語を紹介する「マチナカストーリー」。
前回の懐石料理「いっ木」 一木さんから紹介いただき、4人目はビアハウス「ティルナノーグ」 の大石さん。全3回に分けて、毎週お届けしていきます。

今週は第2回、「未経験の飲食業とお客様の大切さ、そしておいしいビールの話」を中心にお話していただきました。

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人物紹介


大石 世志子
さん
未経験からビアハウス「ティルナノーグ」を開業。沼津で知り合ったベアード・ブライアンさんのベアードブルーイング社で作られる「ベアードビール」を浜松で唯一専門に扱うビアハウスで、ブルワリーから直送される樽生のベアードビールがいただける。飲む側専門だった経験を存分に活かしたお店づくりで、常連さんも多く店内の雰囲気がとても良い。

店舗のWebサイト→ ビアハウス「ティルナノーグ」(浜松市中区田町329-8)

飲食を経験してたら怖くてできなかったかもしれない

伊藤 お店を出すと決まって準備をしている中で、これが一番大変だったなということは何かありましたか?

大石 きっと、飲食を経験してたら怖くてできなかったのかもしれない。と今は思います。

一同 おお、なるほどー

大石 何も知らなかったから、えいやっ!っと始めちゃったので、怖いものが何かもわからず始めたという感じですね。みんなして「もうだめなら3年持たない、すぐにだめだよ」と言ってたので、「だめなら撤収!」っていって始めました。

伊藤 旦那さんと二人でお店をやられているんですか?

大石 一応夫は…”掃除には”来てます(笑)

一同 (笑)

大石 基本的には私がやっていて、あとはバイトの子に手伝ってもらっています。

鳥居 旦那さんはお店に立とうとか、立ってみたいとは思っているみたいですか?

大石 あのねぇーそれがあんまり思っていないみたいで、どっちかっていうとお客さんに喧嘩売りそうで怖いので…(笑)

伊藤 飲食は未経験でも接客関係のことは以前やられていたんですか?

大石 接客…といえば接客になるんですかね?そもそもは横浜で小学校の教師をしていて、それからいろいろあってこっちに来てからは”公文(くもん)”の教室やっていたりしていましたね。相手はお子さんばかりでしたけど。

伊藤 ちなみに、旦那さんは応援してくれたんですか?

大石 そうですね、やるなら好きにやればという感じでしたね。

伊藤 オープンするまでの準備で失敗しちゃったなという体験談何かありますか?

大石 お釣りの用意をしてない以前に、レジ買わなくちゃ!ってレベルでしたね(笑)一週間前くらいになって、ああレジってやっぱり必要かー!ってなってすぐに用意しました。もう何をどう用意していいかもわからず、助けてもらってばかりでしたがなんとかという感じでしたね。

伊藤 フードのメニューとかはどうやって決めましたか?

大石 うちの下の娘が栄養士なんですよ。それで、社食とかの関係に勤めていたんですけど、その後白金台の日本料理のお店に務めていたりしたので、最初の頃は「絶対おかんだけじゃやれないだろう」って言って、毎週末にこっちに来てくれていて、そのときにメニューとかも考えてくれました。あとは、今うちはソーセージは掛川の大石農場さんを使っているんですけど、ソーセージとかも色々食べ比べたりして決めたりとかしましたね。

本場ドイツ製法 大石農場ハム工房
ーー大石農場ハム工房は静岡県掛川市でハム、ソーセージを大切に育てた豚で、ていねいにていねいに手作りしています。

それと、ベアードビールはタップルーム(ビールが飲めるお店)をいっぱい持っているのでそこのメニューを少し教えていただいたりして揃いましたね。

おかげさまでお客さんにも周りの人にも恵まれた環境に

伊藤 すごい、そういった意味では周りに恵まれていましたね。

大石 そうですね、本当に恵まれていると思います。何より一番なのは、お客様たちがほんっっとにいい人たちばっかりなんです。もう本当に、うちは来ていただいてるお客さんがいるから潰れずにここまで来たってみんな言っているんです。

というのも、私、お金をもらうのを忘れたりするんですよ。うちはキャッシュオンでやっているんですけど、たまーにお金の回収忘れる事があって…(苦笑)お客さんが「はい、これ忘れてるから持ってくように!」ってやってくれて。もうほんっとうにうちが潰れないのは皆さんのおかげ、みんなありがとう!って思っています。

伊藤 浜松に戻ってきてお店を開いて、お友達の方とかは結構いらっしゃったんですか?

大石 最初、平成になりたての頃に浜松にいたので、その頃の友人も結構いましたね。なのではじめましたーって連絡したら「何バカなことやってんだ(笑)」とか言われたり「心配で見に来たぞー」って来てくれたり(笑)

伊藤 開店したときの従業員は大石さんとアルバイトの方で始めたんですか?

大石 ええと、一番最初は友達・・・飲み友達が手伝ってくれました(笑)

鳥居 人柄ですねー、いいなああんまり人材に困らなそうだ(笑)

大石 なので今でも、お店がばーっといっぱいになっちゃったりして人手が足りなくなっちゃってきたりしたときとかに「入ろうか?」って言ってくれたり、友達のご主人が飲みに来てるときとかは電話して「今大変だよ」って奥さん呼んでくれたりとか、あとは若い男の子が「じゃあ手伝います」って言ってお皿を洗ってくれたりとか(笑)

なのでもう、うちは本当にお客さんや常連さんとボーダーがあんまりないという感じで。現物支給(ビール)でお礼しますよ。

伊藤 大石さん自体も、いっぱいあるビールを「利きビール」といいますか、ビールの識別はもう慣れたものですか?

大石 そうですね、だいたいは分かります。でも、意外と難しいんですよ。わかりにくそうなところを同じもの3つ並べてやると、分かんなくなったりします。「色」と「香り」でまず見極めてます。「色」が全部違うので、基本は「色」と「香り」で、次に「味」で判断してだいたい見当がつきますね。

伊藤 お店の人たちは飲まないんですか?

大石 飲みますよ。テイスティングは仕事なので、「もう~つらいわぁ~」って言いながら(笑)特に、樽を変えたときにチェックしますよね。あとはちょっとずつちょっとずつ飲みながら状態をチェックします。

お客様は、私よりも本当にいい舌を持ってらっしゃるので、「先週の樽とこれ変えた?」とか言われる方がいて。これがわかる方がいっぱいいるんですよ!

鳥居 すごいですね!

大石 先週と今週どころか、季節限定って、去年の同じ時期と今年の同じ時期で出てくるんですよ、秋限定とか。「去年に比べて、今年は…あれだね」って言う人とかもいて、去年の味と比べられる方もいてすごいわーって思いますね。

なので、皆様がちょっとおっしゃったときとかには、小さなグラスで少しテイスティングしたりします。

伊藤 ちなみに、人気のビールはどれですか?やっぱりお店のオリジナルビールですか?

大石 オリジナルビールももちろんですが、実は、これが「駿河ベイインペリアル」っていうのですね。

鳥居 おー”IPA”ですよね。

インディア・ペールエール | Wikipwdia
ーーインディア・ペールエール (英語: India Pale Ale; IPAとも) は、中程度かそれよりもやや高いアルコール度数をもつエール[1]。液色は銅のような明るい琥珀色[1]。ホップの風味が強くて苦味がある[1]。しばしば、麦芽のフレーバーを伴う[1]。IPAは通常ペールエールのカテゴリーに入れられる。21世紀初頭では、アメリカのクラフトビールの醸造所では一般的に醸造されているスタイルである。

大石 そうです、濃くて香りも良くてホップも効いてるんですがアルコール度数が高いんです。なのでこれを最初に飲んでしまうとあとがちょっと物足りないように感じてしまうかもしれませんね。

それで、私の今のブームのビールは、これです。「ウィートキング ウィット」。小麦の白いビールです。あとは、夏とか気温が上がってくると軽めのラガータイプのビールがいいかと思います。「沼津ラガー」とか「修善寺ヘリテッジ ヘレス」とかが飲みやすいですね。

ラガー好きなお客さん、結構いますよ。

【おまけ】お試しでベアードビールを飲ませていただきました。「沼津ラガー」と「駿河ベイインペリアル」


テイスティンググラスで少しだけいただきました(鳥居)

駿河ベイインペリアル(右)は、ざ・IPA!という感じです!飲みごたえがあってクーッっと来ます。強めのお酒であることも相まって深みのある味で、飲んだ後のこの鼻に通る香りが素敵です。ホップの香りがすごいいいですね。

沼津ラガー(真ん中)は、あっさりしていて飲みやすいビールですね。夏の最初の一杯にはもってこいです!ここからだんだん強い目に行くのがよさそう!

ウィートキング ウィット(左)小麦の白いビールということで、わかりやすい色の違いを撮るためにちょびっとだけ入れてもらいました。

伊藤 ベアードビールが飲めるのは、浜松ではここだけですよね。

大石 そうですね、あとはイタヤマチカフェさんとかがそうかもしれないんですが、ボトルをおいているところは他にもあるかもしれません。樽でおいているのはおそらくうちだけですね。

あと、ビオ・あつみさんとメルカート間渕さんにボトルが置いてあります。それと、遠鉄にベアードの子が対面販売に来ていたときに、お客様が駿河ベイのボトル買ってきて飲み比べをしました。その時に「やっぱり樽!」って言っていました。

もちろん会社から来ているので保存状態もすごくいいボトルを売っているので、品質は最高にいいんですけど、やっぱりボトルと樽では味は異なりますね。

駿河ベイインペリアル | ベアードビール
ーー非常に複雑だが、バランスのとれたダブルIPAだ。ホールフラワーコーン(生ホップ)で2度ドライホッピングされ、樽(瓶)詰の際にクロイゼンされている。
ホップのキャラクター(苦み、フレーバー、アロマ)は深遠である。私たちの地元駿河湾が深く壮大なように、奥深くインパクトが強い。(WEBサイトより)

沼津ラガー | ベアードビール
ーークリーンでソフトな沼津の水とフロアモルテッド(地面に敷きつめられ発芽させた)の大麦麦芽、そして世界のホップを組合わせて誕生したラガー。
エールのようにリッチでフルボディ。まろやかで凛として、ゴクゴク飲めるラガー。無ろ過で自然発泡、まるで昔に戻ったようなラガーだ。(WEBサイトより)

ウィートキング ウィット | ベアードビール
ーー「ウィット」とは、「ホワイト(白)」の意味。この小麦を主役にしたベルギースタイルエールの白濁した色に由来している。
ウィートキング ウィットは、ホップ使いは軽めで、フレーバーにいいバランスを与える程度だ。
いきいきとしたフルーツのようなフレーバーは、ベアードのハウスベルギーウィットビア酵母の発酵過程から生じる素敵な副産物である。(WEBサイトより)

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今週はここまで!
次回は11/4金曜日に公開予定です。お楽しみに!