【まちなかストーリー】はままつ染め織りマーケット座談会 第1回「浜松の”繊維”の魅力と出会ったきっかけ」

まちなかで活躍する人にスポットを当てて、そのヒトの街に対する想いや物語を紹介する「マチナカストーリー」。
今回は「はままつ染め織りマーケット」のみなさまに、座談会形式でインタビューしました。全4回に分けて、毎週お届けしていきます。

今週は第1回ということで「浜松の"繊維"の魅力と出会ったきっかけ」を座談会インタビュー形式で聞いていきます。

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【まちなかストーリー】登場人物とインタビュー全記事まとめ

人物紹介

(左から) はままつシャツ/DM.Sae 水野さえ子さん
有限会社 ぬくもり工房 大高旭さん
染め紡ぐ浜松 廣上明子さん

ウェブサイト:

「はままつ染め織りマーケット」座談会形式インタビュー 第1回

今回のまちなかストーリーは5月20日、5月21日にAnyで開催される「はままつ染め織りマーケット」の水野さん、大高さん、廣上さんの御三方をお招きして座談会形式でインタビューを行いました。

歴史のある繊維の産地である浜松、今も匠の技で作られる浜松生まれの生地の良さを広めていく活動をされています。どんな方がどんな思いを持って活動しているのか、お話を伺っていきたいと思います。

「はままつ染め織りマーケット」とは?│はままつ染め織りマーケット
「遠州・浜松」は、とても歴史のある織物の産地です。 高い技術の「染め」「織り」で作られる生地から生み出される、多種多様なアイテム。 作り手からその思いを聞いて、直に触れてください。

普段では「見られない!」「聞けない!」ことがたくさん体験できる、『生地』 『作る』『売る』 すべてが産地ならでのマーケットを開催します!

第1回「浜松の"繊維"の魅力と出会ったきっかけ」

ーーまずはじめに、みなさま簡単な自己紹介と繊維に興味を持ったきっかけをお話していただきたいです、順番にまずは水野さんからお願いします。

水野(はままつシャツ/DM.Sae):
私は元々、北海道出身なんです。浜松にきて就職して、その時に幼稚園の先生をしていていました。なので、元々は幼稚園の先生なんです。

廣上(染め紡ぐ浜松):
幼稚園の先生だったこと、新聞で私も最近知ってびっくりしました。

水野:
意外でした?(笑) その後結婚して家庭に入ったんですが、家の近所からガシャガシャって音が聞こえてきて。北海道にはこういう環境はないので、何の音かなーと気になっていたんです。

こどもを抱っこしながら近所を散歩しに歩いたっていうのが遠州の繊維の空気に触れた最初の出来事でした。なので初めは興味というよりは、単純に「何の音かなー?」って思うくらいだったんですよね。

それである時、地域のこども会の活動で廃品回収ってありますよね?あの時に布がいっぱい廃品として出てくるんですよ。それも、普通に使える生地をちょっと切った1・2メートルくらいの生地が廃品回収に出ていて。すごくびっくりしました。これは何だろうって。

誰か見てないかなって周りをキョロキョロしながら、こっそり3束位持って帰って(笑) その布を利用して、こどもの服を縫ったり、自分のスカートを塗ったりして。

…こんな使える布が普通に捨てられてる、ここはどういう土地なんだろうって思ったんです。私の実家では、布の生地なんかお金を出して買わないと決して手に入らないのに。 ここではゴミ(廃品)になって出て来るっていうのが、すごく不思議でした。

Any 伊藤:
そうしてこの土地の布生地や繊維に触れていったんですね。今ははままつシャツ部を初め多くの活動に関わっていますが、そういった生地や繊維に関わる活動を始めたきっかけは何でしたか?

水野:
それは、私がこどもの洋服を縫いながら、35歳で洋裁学校に入ったんですけど、始めたら洋裁が楽しくてやめられなくて。 それで、40歳近くなってもやめずに続けていたので、どうせなら仕事にできたらいいなと思っていたら、大高さんのところで取り扱っている「遠州綿紬」との出会いもあって、シャツを縫い始めたっていうのが1番のきっかけですね。

大高(ぬくもり工房):
ぬくもり工房を法人化する前からの知り合いで、もう10年位の知り合いですもんね。

Any 伊藤:
それで遠州綿紬でシャツを作り始めたということですね。はままつシャツ部はどういう感じで始まったんですか?

水野:
シャツを縫い始めてから、いろいろ見たり知識つけていって、他に様々な生地があるっていう事を知っていく訳なんですけど、世界的にニーズの高い生地が浜松で織られているっていう事を知るきっかけになったんです。

それで、目の前にはシャツを縫って欲しいっていうお客さんが結構いらっしゃるけれど、今は縫ってくれるシャツ屋さんがいない。昔は地元の人に頼んでいたんですけどね。 昔、浜松ってたくさんのシャツ屋さんがあったのはご存知ですか?

一同
「へえぇー」(驚き)

水野:
私が知っているだけでも、シャツ屋さんが結構あったんですよ。 テーラーとはまた違う、オーダーメイドシャツのシャツ屋さんです。かつては、百貨店などではない個人のお店がありましたが軒並み閉業してしまって、そこを利用していたお客さんが私のところに訪ねてきてくださったんですよ。

シャツ屋さんを利用していたお客さんのシャツを私が縫う。というと、ちょっと心苦しいというかおこがましいころもあったんですけど、作るとお客さんに喜んでいただけるので依頼を受けていました。

欲しい人がいるけど、頼めるところがない。 それなら「みんなでシャツを縫えば面白いんじゃないか」と思ったんです。

私の知り合いでシャツを縫っている人も何人かいたので、「じゃあやっぱりシャツ生地が得意な産地ならシャツをみんなで縫ってみんなで着ればいいじゃない」という、本当にシンプルな発想で始まりました。名前も「じゃあはままつシャツ?」と自然な流れで決まりました。

Any 伊藤:
始めた当時は、店舗を持っていたわけではないんですね。

水野:
はい。はままつシャツ部は活動を始めてから今年で6年目になりますが、これまではずっと年4~5回の販売会を続けてきました。そしてこの5月から月2回の定期販売会をスタートします。

シャツ部もだんだんとメンバーが増えて、今では15名くらいいます。作り手だけではなくて、コーディネーターさんとかも合わせてです。こういうチラシを作ってくれたりする方とか、大学の先生もいらっしゃるし、主婦の方もいらっしゃるし、いろんな方が在籍して協力してくれています。

Any 伊藤:
やっぱり実店舗があることって大事ですよね。 自分の作品を販売する場を作って毎月定期的にやってる方がいるんですが、定期なのでリピーターが蓄積されていくんです。

イベント出店とかまるたま市とかだと、なかなかリピーターになってもらうのが難しいみたいで、来月またここでやりますよって紹介できるので非常に効果があるっていうのは聞いたんで素晴らしいと思うんですよ。

水野:
そうですね。おかげさまで第2第4日曜日なんですけれど、5月から販売拠点ができて私たちもとても喜んでいます。東区の本当に通り過ぎて分からなくなってしまいそうな場所で、中に入ってみないとよくわからないという建物なのですが…

大高:
あえて探しに行くっていうね。出会いに来て欲しい空間だから。

伊藤:
今はここで、オーダーとかもできるんですか?

水野:
まずは、販売のみです。 私はオーダーを受けられるんですけど、シャツ部としてはまだ準備が万全ではなくて。これからメンバーで少しずつ相談していきます。

 

ーー次はぬくもり工房の大高さんに聞いて行きたいと思います、大高さんは元々浜松のご出身なんですか?   

大高(ぬくもり工房):
そうですね。一度外に出ていて名古屋にいたんですけど、紆余曲折あって浜松に戻ってきました。

ぬくもり工房っていうのを作った女性店長がいて、その方も寿退社で3か月後に辞める事になって、父の入院等もあって浜松に帰って来ようということになったんです。

それで、何をしようかなってなった時に、この会社は長く続かないのが分かっていたのですが、1回その間、ちょっと手伝ってって。続かない会社って大前提で。

伊藤:
ということは元々、ぬくもり工房って会社があった訳ではないんですか?

大高:
元々は、大きな幸せって書いて大幸(ダイコウ)って、繊維商社ですね。1966年から創業した会社があって、当時は祖父が700件くらいから生地を仕入れて、バンバン出す、トラックいっぱい詰めて出すというような事をやっていた会社でした。

先ほど水野さんがうちに来てくれたってお話してくれていた時には、その事業はもう縮小していて、当時65、66歳くらいのおじいさんの友人が1人でやっているという感じでした。

注文は電話で取るんですけど、今は品番とか名前とか付けるんです。メモ用紙に青系の生地10反みたいな。そこがスタートだったんですよ。

そこに興味を持った若い女性がいて、「ぬくもり工房」っていう名前で楽天市場のネットショップをはじめまして。ネットショップで売り上げがそこそこ上がるようになってきていたころに、僕が入ってPCを使いながら段々覚えていってって形ですね。

伊藤:
なるほど。元々、最初の頃はネットショップで店長みたいな感じなんですね。

大高:
そうですね。それでだんだんとゆりの木商店街からバザーとかに出品したり、アート・クラフトフェアに出店したりしていって、そういう所から実際の店舗を持つようになっていったという感じですね。

染地台のショップは2013年の11月にオープンで、できたのは今から3年ちょっと前くらいです。その間の6~7年位は実際の店舗がなかったんですよ。あくまで、楽天と業者卸とイベント出店でした。

ちなみにぬくもり工房が法人化したのは、2006年の4月、法人化して今は10年位ですね。 店舗ができるまでは半田山にあるテクノポリス推進機構の中の1室だったので、お客さんが来るとかはなくて、事務所として借りていました。

伊藤:
前身のお父さんの会社とぬくもり工房は別会社に切り離したということですか?

大高:
そうですね。父の会社の時にぬくもり工房を作って、それを分社化したという流れです。分社してから1年位で父の会社が終わっちゃって、当時は間借りしていたので事務所にいられなくなってしまって。

すぐ関係者に聞いたら、テクノポリス推進機構が空いているって教えていただいてすぐに事務所を移動しました。

伊藤:
今はぬくもり工房は何名くらいでやっているんですか?

大高:
今は3月いっぱいで10名になりますね。 昨年、市内にある縫製工場の事業を引き継ぎました。織りの方は全然まだできてなくて。これからやれたらいいなと思っています。

遠州紬プロジェクトっていうNPO法人団体があって、水野さんとか、10名位が所属している団体があって、今回のイベント「はままつ染め織りマーケット」は「NPO法人 遠州縞プロジェクト」として、参加させていただきます。

遠州綿紬の伝統と技術を未来へ – 遠州縞プロジェクト[特定非営利活動法人]
遠州縞プロジェクトでは、遠州綿紬の伝統と技術を継承し、感性豊かに新たな商品化・ブランド化を図り、人と町を元気にする事を目指しています

 


(お着物で素敵な帯だったので立って撮影しました)

ーーお待たせしました、最後に廣上さんに聞いていきます。廣上さんはご出身はどちらですか?

廣上(染め紡ぐ浜松):
出身は北海道で、父の転勤で小学校の3年生の時に浜松にきました。社会人になってから半年間だけ外に出ましたがあとはずっと浜松に住んでいます。

伊藤:
染め紡ぐ浜松では着物の着付けとかもされていますよね。もともと着物や浴衣といった織物に興味があったり織物に関わりのあるお仕事をされていたんですか?

染め紡ぐ浜松 -そめつむぐ はままつ-
自分で浴衣や着物を着れたら!って思いませんか? 「着付け教室」ではなく、初心者同士みんなでわきあいあいと着付け練習をしていきたいと思っています。 浜松は、遠州木綿で有名な地。 伝統工芸にも指定されている『浜松注染そめの浴衣』、『遠州綿紬の着物』の一大生産地です! みんなで伝統の浴衣・着物を着て歩ける日を夢見て活動しています。

廣上:
実は、私は、今まで着物や織物に関わったことがなくて、2年前まで、浜松がゆかたの産地だということも知らなかったんです。 今は、熱烈に「浜松のゆかた!着物!」なんて言っていますが、それまでは私自身ゆかたや着物にはぜんぜん興味を持っていなかったんです。

伊藤:
そもそものきっかけは、どんな感じだったんですか?

廣上:
いろいろ重なったんですけど、白井さん(白井商事株式会社)との出会いが大きいです。

浜松織物卸商協同組合/Member/白井商事株式会社

2年前のお正月くらいに、私の周りで、自分で着物を着られるようになりたいって話が出始めて。でも、いきなり着物は難しそうだから、「今年の夏はまずは浴衣を着れるようになろう。」って。それがきっかけで、「着付けの練習会」計画が持ち上がったんです。

それから、着れるようになったら新しい浴衣が欲しくなるかも!と、「浴衣の会社の人だよ」って友達から紹介された白井さん(白井商事株式会社)を思い出して連絡を取りました。

その時は、浜松にゆかたを作っている会社があるなんて想像もしていなくて、白井商事さんは浴衣を販売している会社だと思って連絡を取ったんです。 みんなで買ったら安くしてもらえたりとか、白井さんも喜んでくれるかなって軽い感じで。

結局、白井商事さんは小売りをされていないので「安く買う」目論見は外れたんですが(笑)、これがきっかけで、私は浜松がゆかたの産地であることや、注染そめという染め技法、関わっている方たちの厳しい現状などを知りました。

白井さんも、ちょうど「今の状況を何とかしたい」と考えていたということで、通常は私たちのような一般の人が入ることが出来ない白井商事さんで「浜松注染ゆかた」の見学させていただけることになったのです。

それが、「染め紡ぐ浜松」として初めての活動、「白井商事様見学会」でした。

この時に 初めてちゃんと、浜松注染ゆかたがどうやって作られているかを聞いて、実物を見て、人の手によって染められた注染の力強さと美しさに感動したんです。 浴衣は「10代、20代の若い子が花火デートで着るもの」という今までの概念が変わりました。

業界の方たちは「売れない」と思っているかもしれないけど、そもそも私たちが着ないのは「知らないから」「見たことがないから」というのも大きいのでは?と。 全く興味がなく、20年近く着たいと思ったこともなかった私が「これは着てみたい!」と思ったくらいですから、知ったら着たいと思う人が絶対いるはず!

実際に見学会に参加された方たちは、たくさん並んでいるゆかたの反物を見て歓声をあげましたから。これはみんなに紹介しなきゃ!っと。

さらに流通の関係で、浜松注染ゆかたは浜松で作られているのにも関わらず浜松でほとんど販売されていないという現状も知って、「浜松で着る人が増えたら、作り手さんが喜んでくれるんじゃないか?」って思ったのも「着る人を増やしたい」と思った原動力です。

こんなにきれいな浴衣なのに地元の方が知らないなんてもったいない。知ったら着る人が増えるはずなのに、このまま無くなってしまうなんてもったいないと思っています。

…語り始めるとついつい長くなってしまってすいません(笑)初めたきっかけと動機はこんな感じです。浜松注染ゆかたは本当にきれいで、たくさんの人に着て欲しいと心から思っています。


今回はここまで!

今回のまちなかストーリーは5月20日、5月21日にAnyで開催される「はままつ染め織りマーケット」の実行委員の水野さん、大高さん、廣上さんの御三方をお招きして座談会形式インタビューの内容でした。

歴史のある繊維の産地である浜松、今も匠の技で作られる浜松生まれの生地の良さを広めていく活動をされています。どんな方がどんな思いを持って活動しているのか、少しでも興味を持っていただけましたか?

さあ次は5月20日、5月21日の「はままつ染め織りマーケット」にぜひ足を運んでいただければ大変嬉しいです。普段身につけている「布」の魅力とすごさを再発見できることをお約束しましょう!

「はままつ染め織りマーケット」とは?│はままつ染め織りマーケット

「遠州・浜松」は、とても歴史のある織物の産地です。
高い技術の「染め」「織り」で作られる生地から生み出される、多種多様なアイテム。
作り手からその思いを聞いて、直に触れてください。
普段では「見られない!」「聞けない!」ことがたくさん体験できる、『生地』 『作る』『売る』 すべてが産地ならでのマーケットを開催します!

次回は第2回「浜松の繊維関連の様々なキーマンが集まったイベントについて」聞いていきます!5/2に公開予定です。お楽しみに!

インタビューア:Any 伊藤
記事編集者:浜松つーしん  鳥居