【まちなかストーリー】はままつ染め織りマーケット座談会 第2回「浜松の織物に関わるキーマンが集うイベントについて」

まちなかで活躍する人にスポットを当てて、そのヒトの街に対する想いや物語を紹介する「マチナカストーリー」。
今回は「はままつ染め織りマーケット」のみなさまに、を座談会形式でインタビューしました。全4回に分けて、毎週お届けしていきます。

今週は第2回「浜松の織物に関わるキーマンが集うイベントについて」を座談会インタビュー形式で聞いていきます。

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【まちなかストーリー】登場人物とインタビュー全記事まとめ

人物紹介

(左から) はままつシャツ/DM.Sae 水野さえ子さん
有限会社 ぬくもり工房 大高旭さん
染め紡ぐ浜松 廣上明子さん

ウェブサイト:

「はままつ染め織りマーケット」座談会形式インタビュー

今回のまちなかストーリーは5月20日、5月21日にAnyで開催される「はままつ染め織りマーケット」の水野さん、大高さん、廣上さんの御三方をお招きして座談会形式でインタビューを行いました。

歴史のある繊維の産地である浜松、今も匠の技で作られる浜松生まれの生地の良さを広めていく活動をされています。どんな方がどんな思いを持って活動しているのか、お話を伺っていきたいと思います。

「はままつ染め織りマーケット」とは?│はままつ染め織りマーケット
「遠州・浜松」は、とても歴史のある織物の産地です。 高い技術の「染め」「織り」で作られる生地から生み出される、多種多様なアイテム。 作り手からその思いを聞いて、直に触れてください。

普段では「見られない!」「聞けない!」ことがたくさん体験できる、『生地』 『作る』『売る』 すべてが産地ならでのマーケットを開催します!

第2回「浜松の織物に関わるキーマンが集うイベントについて」

前回の記事:第1回「浜松の"繊維"の魅力と出会ったきっかけ」

ーー去年Anyで「いとへんのまち」をやりましたよね。「いとへんのまち」は浜松の繊維関連の様々なキーマンが集まった大きなイベントのうちの1つだったと思いますが、このイベントが開催されるきっかけって何だったんでしょう?

いとへんのまち – いとへんのまち
【2017/3/19,20 に開催されたイベントです】浜松の注染ゆかたと、和の手仕事! 色とりどりの美しい手染め浴衣と、職人技が光る実演、楽しい体験イベント。 3月19日(土)、20日(日)の2日間です。

廣上:
2年前(2015年)の3月に、愛知県の有名な呉服屋さんが企画した「着物カーニバルin浜松」というイベントがクリエイト浜松で開催されたんです。時期としては、私が白井商事さんの見学会をしたちょうど一週間後でした。

着物カーニバルin静岡・浜松 | Facebookページ
【※2015/3/21,22 に開催されたイベントです】今回は初の地方開催「静岡県浜松市」で開催です!浜松は浴衣や綿の一大産地として有名なのはご存知ですか?今回は静岡限定の「プチ」カーニバル!

そこに、白井商事さん、ぬくもり工房さん、染色作家の高木さん、注染の森本さんなど、何人かの作り手さんが出店していて、その方達と地元の繊維の魅力を発信する「いとへんのまち」というイベント開催の構想が持ち上がったんです。 きっとみんな、なにかやりたいと思っていて、きっかけを探していたんだと思います。

伊藤:
厳しい現状がある中で、なにかやらなくてはって思ってたんですかね。

廣上:
白井さんは特にそうおっしゃってましたね。どうにかしなくちゃいけないって思っていたって。私達、白井さんのところに見学に行って、みんなものすごく喜んだんです。「すごーい!すごーい!きれい~!」って。

そういうのを白井さんも見て、実際の消費者の声を聞くっていう楽しさを感じて、大切だって思われたんじゃないでしょうか。

伊藤:
今、いとへんのまちで、白井商事さんの浴衣を販売しているのは、呉服屋さんですよね。白井商事さんのところは商社というか卸(おろし)ということになるんでしょうか?

廣上:
白井さんは、卸メーカーなので小売りはされていません。そこで、いとへんのまちでは問屋さんがいて、小売があるという業界の流通に関わる人が一同に集まっています。

伊藤:
各工程のいろんな人が集まって、活動している団体なんですね。

去年のいとへんのまちのイベントの集客はすごかったですもんね。

廣上:
ありがたいことに、Anyのイベントとして1番大きかったと言われましたね。

【ワンポイント!】商社と卸(おろし)と小売の違いをざっくりいうと…
・卸(おろし)売業は、一般のお客様以外の業者向けに商品を売っていて、小売業のお店などに商品を卸します。商品を卸すだけでなく、仲介役としての役割も担っているため、本当はもっといろんな役割があります。
・商社は一般的には「卸売業」に分類されます。
・小売業は一般のお客様向けに商品を売っています。

【商品の流れをまとめると】

(生産者・製造者)→ 「卸売(問屋)」 → 「小売」 →(消費者)

【いとへんのまちのすごいところ】

「いとへんのまち」のイベントでは「生産者/製造者、職人、問屋、小売り、消費者」と、【商品の流れ】すべての立場の方が一同に集まって開催されたことがとても大きな意味を持ちました。これにより、「生産/製造者」は、「卸/小売」が同じ場にいるので自分が作った商品を「消費者」が購入している姿を直に見る機会が生まれたとのことです。

「これだけの立場の人が揃ったイベントは初めてで、繊維業界としては普通ではありえない組み合わせ。さらに、業界人の枠ではない消費者の立場の人が「いとへんのまち」メンバーにいることで、「生産者・販売」側も消費者の立場まで自分たちを置き換えて考えられることができたことが画期的だった」とメンバーの白井さん(白井商事株式会社)がお話していたほどです。

というのも、実は今までは「生産者」や「小売」主体などのイベントしか開催されていなかったそうです。

繊維業界では、「生産者/製造者」は「卸・問屋」におろし、「小売」を経て「消費者」に届くという【商品の流れをまとめると】の図と同じような一般的な流通形態をとっているため、「生産者/製造者」や「卸・問屋」が「小売」を介さずに直接「消費者」に販売することは、商品の流通ルートの問題などの様々な理由で積極的に行われてきませんでした。

「いとへんのまち」のイベントでは【商品の流れ】すべての立場の方がいるため、製造者から問屋、問屋から小売、そして消費者への販売は小売を通しています。これにより、普段は公の場ではなかなかめぐり合わない「製造者」と「消費者」が直接交流し声を聞くことができたり、商品を作った製造者として名前が新聞に載ったり、インタビューされたりという場を設けることができたということになります。
(編集:浜松つーしん 鳥居)

ーー去年の「浜松コレクション」というイベントを「いとへんのまち」他3つの団体が一緒になってやろうってなったきっかけは何だったんですか?

みんなのはままつコレクション | LOVE COTTON LOVE HAMAMATSU
繊維の街 浜松で活動する市民団体が一同に集い、展示販売やイベントです。

水野、大高、廣上、:杉浦さん!

杉浦健太さん
浜松市 産業部 産業振興課 で浜松の繊維関係イベントの主要人物をつなげた方。
今回の座談会インタビューにはオブザーバーとして同席。

ーーたくさんお話してもらって嬉しいです、杉浦さんも登場しましたのでいよいよ本題に入りましょう(笑)今回のイベント「はままつ染め織りマーケット」のおすすめポイントを教えて下さい。

杉浦:
このイベントはそもそも産地じゃないとできないんです。産地じゃないとこういう活動をしている人達や職人の方がまずいないですよね。良くも悪くも、自社で作っている会社がやることはありますが、それ以外の活動をしている人達がたくさんいて、こんなに揃っているっていうのが浜松の産地の特徴だと思うんですよね。

水野:
商品の向こう側にある、作り手が見える、透けて見えてくる。生地を織った人とか、制作した人もそうなんですけど。

伊藤:
ものを買うのでも、そのものの裏に隠されたストーリーがあるから、それを知ってファンになっていく。たとえ、価格が高くてもそれを買うみたいな感じですかね。

水野:
機屋(はたや)さんが、こうやって言って、こういうところが織るのが大変だとか、

様子を見にくる関係者がたくさんいる、そういう人とたまに出会ったりすると、またその話が聞ける。商品の向こう側にある人とたくさん出会える。

鳥居:
つくり手がいる地域だからこそ、身近に聞けますもんね。

水野:
そうなんです。それが、地元だから見られる。

少し話していい?

機屋(はたや)さんが、生地を白黒で織ってたんですよ。チェックとか、ボーダー柄みたいになるやつです。その機屋さんが、「これを織るのは大変なんだよー」っていうのを教えてくださって。ボーダーの白いところに黒のけば(ほこり)が織り込まれないようにする為に、扇風機でほこりを飛ばしながら織るんですって。

それが、とても大変でって話をされてて、その何気なくされるお話がもう衝撃的でしたね。

私、けっこう生地を見ているんですけど、そういう風に織られてるなんて、聞いたり見たりしないと知らないじゃないですか。大きい扇風機を2台かけて、ほこりを飛ばしながら織るんだなんて想像もしませんでした。

そういう話を、見ている人や購入する方にお伝えするんです。

だから、実際に見る事もそうだけど、作り手が何気なく話してくれたことや聞き手が感動した事は、なるべくエピソードとして添えたくなるじゃないですか。そういう風になるのは、ここが産地だからだと思うんです。

廣上:
そういう思いって、知ると布が違う様に見えてくるんですよね。

水野:
はままつシャツのお客様は特にそうですね。販売会をやると、ときどき繊維の関係者の方も見えて一言二言、ことばを置いて行って下さるので、それを一般のお客様に「こうやって言ってました」とか「こうみたいですよ」ってお伝えして。

そこでちゃんと情報発信をするとお客様が「えー!?すごーい!」っておっしゃるのを、また関係者の方へ機会をみつけてお伝えして。

お互いにすごいことをやっているって気づくことが大きな発見になって、財産になっていく。

廣上:
それって、水野さんみたいに間に入っている人がいないと、伝わらなかったことじゃないですか。私もすごいと思った。見てもらわなくちゃって。

伊藤:
来場する側は、商品の裏にあるストーリーに触れたいと思ってくるし、出店する側も普段接する事のない一般消費者の嗜好だったりを感じようとする事でこの場がうまく重なっていい感じに織られていくというか。

さらに出展者のモチベーションにも繋がって。出展者にもそういう気持ちになってもらいたい。

鳥居:
実際に見ると絶対、興味持ちますよ。だってあの職人技、不思議ですもん、未だに。

水野:
贅沢なところなんだよって、もっともっと知って欲しいです。

鳥居:
本当はすごいことなんですよね。職人さんと話せるとか、直に見られるとか。

そこから、更に深く知りたい人は、ご案内しますってことで実際に見学にも行けたらすごいですよね。

杉浦:
観光課は私に織屋(はたや)や工房見学の企画を出せって言うんですけど、解決しないといけない問題がまだまだあって実現できていなくて。

見学はできるのか?とか体験学習とかはやっているの?という問い合わせがすごく多くて、すごい需要はあると思うのですが、キャパシティの問題で受け入れがなかなか進まなくて。今後の課題ですね。

水野:
誰かがちゃんとコーディネートして、ちゃんとして案内できるといいんですけどね。1回やるとまた違うと思いますけどね。

杉浦:
そういった完全に一般の人じゃなくて、もうちょっと何か作っている人や興味ある人とかなら、受け入れができるかもっていう話はしていますね。

大高:
今回の「はままつ染め織りマーケット」に関しては、職人さん達も来てくれる企画になる予定なので、そういうワークショップ的なイベントが楽しめるかなって思います。職人さんに直接会えることは、なかなか

ないと思うのでそれがやっぱり1番のオススメポイントなのかな。

水野:
最近の遠州綿紬は洋服だけじゃなく、ジャケットからボトムから、建具の領域にまで使われ始めていてすごいですよ。遠州綿紬のバリエーション、商品のラインナップはどんどん広がっています。

大高:
遠州綿紬と聞いて、まず無意識に着物を思い浮かべると思いますが、逆に着物ってイメージがまったくない人もいますからね。

それこそ10年くらい前は、土産物屋にある雑貨がメインでしたからね。よく田舎の土産物屋にある雑貨というイメージだったので、それが変わってきている。

水野:
廣上さんはじめ、皆さんのご活躍で着物の需要も随分増えたんじゃないでしょうか?

廣上:
はい、そう感じます。私のまわりでも着る方が増えましたね。遠州綿紬の着物は、縮むとか弱いという方もいらっしゃるんですが、個人的には、ワンピースよりも安い位で、自分のサイズで作れる着物っていうのは魅力だと思っています。初心者さんの一着として手に取りやすく、気軽に着られますから。


今回はここまで!

今回のまちなかストーリーは5月20日、5月21日にAnyで開催される「はままつ染め織りマーケット」の実行委員の水野さん、大高さん、廣上さんの御三方をお招きして座談会形式インタビューの内容でした。

歴史のある繊維の産地である浜松、今も匠の技で作られる浜松生まれの生地の良さを広めていく活動をされています。どんな方がどんな思いを持って活動しているのか、少しでも興味を持っていただけましたか?

さあ次は5月20日、5月21日の「はままつ染め織りマーケット」にぜひ足を運んでいただければ大変嬉しいです。普段身につけている「布」の魅力とすごさを再発見できることをお約束しましょう!

「はままつ染め織りマーケット」とは?│はままつ染め織りマーケット

「遠州・浜松」は、とても歴史のある織物の産地です。
高い技術の「染め」「織り」で作られる生地から生み出される、多種多様なアイテム。
作り手からその思いを聞いて、直に触れてください。
普段では「見られない!」「聞けない!」ことがたくさん体験できる、『生地』 『作る』『売る』 すべてが産地ならでのマーケットを開催します!

次回は第3回「浜松の繊維関連の将来の野望・展望・次の一手」を聞いていきます!5/8に公開予定です。お楽しみに!

インタビューア:Any 伊藤
記事編集者:浜松つーしん  鳥居