「まちのしごと、まちのひと。」Vol.9 坂田吉祥さん
- まちなかストーリー
- 2025.12.19
浜松まちなかで活動する人・働く人にスポットを当てたコーナー「まちのしごと、まちのひと。」
そのヒトの想いや活動など「ヒト」にフォーカスをしたストーリーを紹介していきます。
第9回目は、
張り子作家 の 坂田吉祥さん
にお話しをお伺いしてきました。

目次
自己紹介をお願いします!
浜松市馬郡町の出身です。高校時代からお寺や神社・仏像に興味があった事もあり、大学は京都にある美術系の大学に進学をしました。在学中は民俗学を学んだり、バンドをしたり(ドラムを担当していました)興味のあるものに挑戦し楽しい学生時代を送りました。 卒業後は京都に残り、webデザインを中心にデザインの仕事をしていました。 6年程前に会社を辞め浜松に帰郷し現在は「遠州天狗屋」として主に、天狗ちゃんをメインとした張り子「遠州天狗張子」をはじめ、民藝品・郷土玩具・縁起物・お祝い物などの制作販売やワークショップを開催しています。
ーー左)天狗ちゃんと坂田さん。右)バンドマン時代の坂田さん。こちらのミュージックビデオは遠州灘で撮影を行ったそう。気になる方はこちらのリンクよりご覧になってみてくださいね。
天狗ちゃんの誕生秘話を教えてください。
京都での会社員時代に話は遡るのですが、ウェブデザインの仕事の流れでWEBメディアにも関心を持ち、「遠州の郷土史」をテーマとした『天狗ちゃん下界で遊ぶ』というウェブメディアを立ち上げました。浜松に時々帰省していたので、神社やお寺などがメインで、自分の行きたい場所を自分の記録用にくらいの気持ちで発信を始めました。その後SEOの知識があったので分析してみると、意外とアクセスが多く興味がある人がいるんだという事が分かって。と同時に民俗学や郷土史・土着文化って、どうしても最初は敷居が高いところがあるなと感じました。可愛いキャラクターを作りその子に発信をしてもらったら、もっとたくさんの方に興味を持ってもらえるかなと。そんな流れで天狗ちゃんというキャラクターが生まれました。
そこから天狗ちゃんがXなどのSNSを使って発信をするようになり、段々フォロワーも増えてきて、次はグッズも欲しいなと。調べていたら伝統文化の「張り子」に辿りつきました。郷土史が好きだった事もあり、運命を感じて張り子の天狗ちゃんを作るようになりました。
ーー左)毎年秋葉神社さんとコラボで作る「秋葉の天狗張り子」。(2026年番より新春てんぐちゃん展会場にて販売)どれも凝っていて可愛い。中)子年から始まった「干支」x「天狗ちゃん」は2026年で7種類目になるそう。右)貴重なデザイン画も見せて頂きました。
ーー坂田さんの活動や天狗ちゃん情報は☝の公式Instagramをチェック!!また公式サイトはこちらから☞(https://tng-hm.com/)
「張子」の魅力について教えてください。
張り子の制作工程の話になりますが「乾かす」という工程がとても多いんです。作り始めた頃はまだ京都にいたのですが、京都って基本的に曇りが多いし、湿度も凄く高い。京都では作り辛いなと気づきました。郷土玩具って割とその土地の風土を生かして作っている事が多くあります。なので京都では土人形や器の方がメジャーなんです。これは浜松に戻ってきて気づいた事なのですが、浜松は遠州の空っ風と呼ばれる様な強い風もあるし日照時間も長いので、張り子作りにはもってこいの風土だったんです。制作工程からその土地本来の姿が見えるという所にロマンを感じましたね。
また元々民藝は、農家が閑散期に自身で作ったりと、誰でも出来るものも多かったんです。北海道だと木彫りの熊だったり、東北地方だとこけしだったり、身近な道具でその土地の気候にあった方法で作られてきた物なんです。今ではそういった作品が「アート」として扱われる事も増えましたが、それは時代の副産物というか今だからこそだと思うんです。只制作時の精神性を見れば、土地の風土が大きく影響するので、農家や漁師に近いと思います。その精神性の部分とは反対に周りからはアーティストとして見て頂ける乖離(かいり)も面白い部分だと感じています。日本の古来から続く八百万の神様への信仰心と結びつく部分もあり、縁起物として扱われる事もある民藝は奥深く面白い世界だと思います。
何か思い出に残っているお仕事はありますか?
ちょうど今「HAMAMATSU WIMMEL BOOK」という絵本が発売になったのですが、そのイラストを担当させて頂きました。この絵本は浜松のまちを見開きの一枚絵にすみずみまで書き込んだ絵本です。浜松の旧7行政区がそれぞれ1ページずつになっており、過去・未来・現在の要素を織り交ぜて描きました。そして協賛企業さんのご協力により市内の学校に寄贈も行いワークショップも開催しています。セリフのない絵本なので、子供たちが絵に合わせてセリフを自分で考えて発表するんです。見学に行かせて頂きましたが、自分で考えるイメージ力や自発的に発言する力を養うきっかけになったら良いなと思いました。
今回のお仕事を頂き、以前描いたことのある鳥瞰図に似ているなと感じました。実は6年前浜松に帰郷した際に浜松の街の鳥瞰図を描いたんですよね。その時から6年の間、浜松を歩き、資料を漁り、話を聞き、土地への解像度がだいぶ上がっておりました。それを落とし込んだのが今回のお仕事で、僕の中で点と点だったものが繋がったというか、まさに集大成の絵本になったなと感じています。
ーー左・中)「HAMAMATSU WIMMEL BOOK」は谷島屋各店舗やBOOKアマノ等の書店で販売中です。またオンラインでも購入可能だそう。詳しくはHAMAMATSU WIMMEL BOOK公式ぺージからご確認ください。右)坂田さんが初めて描いた鳥瞰図。
今後の目標はありますか?
引き続き遠州郷土史も深めつつ、次は外(海外)に目を向けていきたいなと思っています。元々海外は好きで、いつかのタイミングで天狗ちゃんというコンテンツを海外で展開してみたいと思っていました。既にオンラインサイトで台湾や韓国の方に購入頂いたりはしているのですが、ヨーロッパやアメリカでも展開してみたいなと。ヨーロッパでは「パピエマシェ」という日本で言う「張り子」の文化があるのですが、向こうは家具などの工芸品の文脈が濃い印象があるので、日本の民藝やキャラクターという文化をのせた「天狗張子」というコンテンツが海外ではどうみられるのか?挑戦してみたいです。
最後にこの記事を読んでくれている方にメッセージなどあれば教えてください
12月27日~1月4日まで天竜区二俣のどんつき(浜松市天竜区二俣町二俣330)にて個展「新春てんぐちゃん展 ~午~」を開催致します。「遠州ならではの干支 X 天狗」をテーマとした作品を展示し、遠州の歴史や文化にも触れ楽しんで頂ける展示会になっていてます。遠州の民藝「張り子」を中心に、浜松注染そめや遠州織物など、地元企業や地元作家とのコラボ作品も多数用意し、いろいろな企画も考え中です。皆様の新年の験担ぎと、遠州の歴史や文化に触れるきっかけになれば良いなと思っております。
また同展示会場・同日程で、記事内紹介のあった絵本「HAMAMATSU WIMMEL BOOK」のミニ展示も開催しております。12/28の18時より、絵本の発起人、大城七瀬氏・山崎しんのすけ氏をゲストに招きトークショーも開催(参加無料)します。天狗屋が聞き手となり制作秘話をディグっていきますので、是非お気軽に遊びに来て頂けたら嬉しいです。

「新春てんぐちゃん展~午~」の詳細情報は公式ページをチェックしてみてくださいね。
ーー坂田さん、貴重なお話を有難うございました。








