「まちのしごと、まちのひと。」Vol.15 相川 アンジェラ さん

浜松まちなかで活動する人・働く人にスポットを当てたコーナー「まちのしごと、まちのひと。」

そのヒトの想いや活動など「ヒト」にフォーカスをしたストーリーを紹介していきます。

第15回目は、

浜松いわた信用金庫 勤務の 相川アンジェラ さん

にお話しをお伺いしてきました。

 

 

自己紹介をお願いします!

ブラジルのサンパウロ州・モジ ダス クルーゼスという街の出身です。大学を卒業後日本に移住したのが29歳の頃。夫と当時1歳と3歳だった子ども2人を連れて群馬県に行き、お弁当屋さんで働いていました。役所で保育園が一年先まで一杯と言われ子供を育てながら働いていたことや、温暖な気候から積雪のある寒い気候への環境の変化、言葉も分からない中での生活は心身ともに大変でした。その後親戚にサポートしてもらい、保育園の預け先が見つかり移住した先が浜松でした。浜松では2年程工場に勤務した後、自分の子供の預け先だったブラジル人向けの保育園の他、ブラジル人学校でもポルトガル語を教える先生として6年程働きました。

そして2006年、磐田信用金庫(現:浜松いわた信用金庫)に初の外国人職員として入社しました。当時ブラジルの金融機関と当行が提携する事になり、バイリンガルな職員の採用募集がありました。大学時代にブラジルの銀行に勤めていた経験があった事、独学で勉強した日本語を生かせる仕事をしたかった事、そして新しい環境に挑戦したいと思っていた時期だった事から面接を受けました。見事採用いただき現在勤務し20年がたちます。

左)向上心とチャレンジ精神に溢れる明るいお人柄が魅力の相川さん。一見難しそうに見える事にも挑戦していく事が自分の生きがいだとお話頂きました。中)群馬県で暮らしていた頃。初めて見る雪に感動したそうです。右)ブラジル人向けの保育園での活動の一コマ。子供達と一緒に身体を動かしたりダンスを教えたりもしていたそうです。

 

金庫でのお仕事はどんな事をされていますか?

入社当時は、ブラジルの現地銀行との提携を進めるにあたって必要な業務全般を担当していました。送金業務を始めシステムの改修、会議の通訳や資料の翻訳等、二行間の橋渡し役として多岐に渡る業務を担当しておりました。またポルトガル語専用のフリーダイヤルを立ち上げ、お客様のお困り事のサポートもしてきました。

現在は「多文化金融教育プログラム」に力をいれていて、浜松に住む外国人向けに金融教室を開催しております。

なぜそのようなプログラムを始めたのですか?

20年間銀行員として日本に住む外国人の方々に接してきて感じた事があります。日常生活や経済面で困難を感じる要因は、単純な「言葉の壁」だけではないという事です。例えば経済に関しての知識の違いだったり、母国と日本との文化や習慣の違いだったりと沢山の要因が重なりあって生まれる壁だと気づきました。そしてそれを改善していく為には、通訳以上のサポートが必要だと感じました。

このプログラムの一番の目的は「社会的に自立してもらうこと」。その為に日本の雇用形態の話や前向きな将来ビジョンを一緒に考えたりする内容になっています。また日本の文化や教養も加えて知ってもらうことで、生活の質が向上すると思います。日本での当たり前とブラジルでの当たり前は違う。その違いを活かしつつ、一人一人の生活がより前向きなものになるようなお手伝いが出来ればと思い日々奮闘しております。

ーー金融プログラム開催時の様子。経済や時代の変化などニーズに合わせて教育内容を試行錯誤されているそうです。

続いてはSPACの活動について教えてください。

入団の経緯は?

母の影響もあり、2歳から中学生まで日本舞踊を習っておりました。そして大学では舞踊芸術を専門に勉強しており、卒業後はアメリカでモダンダンスのプロを目指していました。でもある時怪我をしてしまい、その夢は諦めました。
時は過ぎ、2023年。浜松城で開催された「SPAC」という劇団の野外劇を観に行く機会がありました。久々に観る芸術作品。劇が始まると胸が高鳴り鳥肌が立つ程感動したのを覚えています。それは自分の中で眠っていた”芸術活動に対する想い”が目覚めた瞬間でもありました。それでもう一度、舞踊芸術に挑戦したいと思ったタイミングでSPACからある作品の演者の募集が出たんです。仕事と両立しながら私に出来るかな?と不安もありましたが、最後に勝ったのは自分の中の「やってみたい」という思いでした。本格的な演劇にチャレンジするのは初めてでしたが、兎に角チャレンジしてみる事にしました。

相川さんが出演したのはどんな作品なのですか?

私が出演する事になったのは『うなぎの回遊 Eel Migration』という作品でした。産卵のために何千キロも海を旅するウナギの生態と、日本とブラジルを往復してきた人々の移動の歴史を重ね合わせ、命や暮らしの営みを見つめる物語です。作品が完成するまでの間に一年を費やし、演出家の石神さんと私達の対話から生まれたストーリーも盛り込まれています。まさに私達の人生と重ね合わせた演劇になっています。

この作品はポルトガル語と日本語の二か国語で話が進みます。通常の会話や場面の情景が進む場面は日本語で、自分の心の中の声を語る場面はポルトガル語を使って演じました。観ている方がこの世界を一緒に旅をしているような感覚や想像を広げてもらえる作品になっていて、ポルトガル語が分からなくても楽しんで頂ける作品になっていると思います。4月に静岡市にある野外劇場で無事公演を終えました。最後までやり遂げたという達成感とこの作品を通して今まで知らなかった新たしい自分に出会えたような気がします。

ーー「うなぎの回遊」に出演時の相川さん。今後の相川さんの活動にも注目です‼

「SPAC」の公式ページはこちら→SPAC公式サイト

ブラジルで29年、日本で29年、ちょうど半分の人生を2つの国で過ごしてきた相川さんが今想う事はありますか?

私は母が日本人、父が日系ブラジル人という家系に生まれました。幼少期より日本舞踊を教わり、母や祖母との会話は日本語、小学校入学時はポルトガル語がほとんど分からず、最初の1年は言葉の壁で苦労しました。それで小学校生活が始まったら、周りから母国語はポルトガル語でしょ。話せないと困るよ。と言われ、そこからはポルトガル語だけ話すようになりました。話さなくなった日本語は、来日後改めて独学で学び直しました。両国にルーツを持つ私は、ブラジルでは「ブラジル人じゃない、日本人でしょ」と言われ、日本では「日本人じゃないでしょ」と言われる事もありました。2つの国にルーツを持つ事で自分のアイデンティティに戸惑う時期もありましたが、今ではそれが自分の大きな強みであり、かけがえのない財産だと感じています。日本人で居る私もブラジル人で居る私もどちらも本当の自分。自分の中に自分が2人居る感覚というのかな。今はそれを大切な個性として誇りに思い、ブラジルの心も日本の心も持ちながら、両文化にルーツがある事をこれからも大切にしていきたいと思っています。

左)ブラジルで暮らしていたころの相川さん。幼少期から天真爛漫だったそう。中)日本へ旅立つ空港での一コマ。右)インタビューの中でもご家族のお話がたくさん登場し、家族の絆を感じるインタビューでした。

今後の目標はありますか?

浜松はブラジルと縁の深い街です。私を含め日本とブラジルの両国にルーツを持つ方、日本からブラジルに渡った方、そしてブラジルから日本へ来た方。日本とブラジルには大事な繋がりがあると思います。それは私達の親や祖父母が繋げてくれた縁。文化的、経済的、社会的な繋がりを今度は私が継承していきたいと思います。

そして将来は「人と人を繋ぎ、来てくれた方に温かなひと時を提供できるような場」を作りたいと思っています。移動カフェのようなイメージで、一期一会に出会い、交流できるような形を目指しています。そこで提供するのは私の郷愁の味「ブラジルのコーヒーと伝統的なケーキ」。味や匂い、それをまたどこかで思いだした時に温かな記憶が蘇るようなそんな体験を提供できるような場を作れたらなと思っています。

最後にこの記事を読んでくれている方にメッセージなどあれば教えてください

何かを創り出すこと、そしてアクション(行動)を起こし、小さな1歩でも良いから行動してみる。この世界には自分を変えていく為のチャンスもツールもたくさんあります!私達が持つ多様な文化と日本の素晴らしい伝統が混ざり合うことで、これからの日本はもっとカラフルでエネルギーに満ちた社会になると信じています。お互いの違いを魅力に変えて、笑顔あふれる豊かな未来を一緒に創っていきましょう!

ーー浜松いわた信用金庫の公式ページ公式Instagram「はみぃぐらむ」も是非チェックしてみてくださいね。

ーー相川さん、貴重なお話を有難うございました。

 

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